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はじめに

ビエンナーレが、札幌のページをめくる。

札幌ビエンナーレプレ企画実行委員会 実行委員長 大平具彦
札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員会
実行委員長 大平具彦

ある絵や音楽、ある言葉や映像にふと出会って、それまでの自分の心や脳に新しいページが開かれるという経験は、誰にもあると思います。その時ひとは、まわりの空間に溶け込み、世界とひとつになった感覚を覚えます。芸術が人間にとってもっとも深いコミュニケーションをもたらすと言われるゆえんです。また、何かを分かろうとしてあれこれ頭をひねっている最中に、ふと脳に光が通って、一気にイメージが湧いてくる瞬間があります。いわゆる「ひらめき脳」と呼ばれる働きで、芸術の源泉であるとともに、何かを創り出す上でもっとも根源的なものです。

創造性と呼ばれるこれらの働きは、これまではアーティスト独自のものと限定されて考えられていましたが、最近では、人間の脳に本来的に備わった資質そのものであると認識されるようになってきました。これは、アートが体現してきた創造的な力こそが人間の生きる基盤であり、今後はこうした新しい尺度が社会や産業をデザインし直してゆくことを示しています。人間は生きてゆく上で表現せざるを得ない存在です。アーティストをその代表者として、アートを核として、私たちひとりひとりが、日常の衣食住やライフスタイルの中に、街の生活空間の中に、経済や産業なども含めた社会環境の中に、創造性というアートの力を都市の共通の資産として実らせてゆくこと、それが札幌ビエンナーレのめざすところです。

実は、このように、アートが持つ創造的な力によって都市を再活性化し、街づくりを進めるという試みは、国内でも海外でも多くの都市で展開されており、今や世界的な潮流となっています。であれば、それをただ後追いするだけでは意味はなく、他の都市にはない独自の札幌モデルを創り出さねばなりません。札幌ビエンナーレの真の目標はそこにあります。札幌そして北海道が豊かに備え持つ文化資源、環境資源をもってすれば、それはきっと可能です。アートの力を私たちの生活環境の全方位に開くこと。これまでともすれば特権的なものと考えられていたアートを、社会的な創造資源へと再起動させること。すなわち、「アートから出て、アートに出よ」。

こうして、世界でこれまで展開されてきたビエンナーレやトリエンナーレなどの国際総合芸術際に、札幌が新しいページを加えることができたとき、それはとりもなおさず、札幌という私たちの街自身が、これからの21 世紀に向かって、新しくページをめくることにつながるはずです。

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